2023/5/31
コクヨ社員が、自社の家具を実際に使ってみて発見した内容をお届けするシリーズ第6弾。ついに前編・後編にわたる長編をお届けします。
今回はファニチャー事業で14年間オフィスの空間設計や家具に向き合ってきた社員が、在宅勤務をきっかけに自宅の家具にこだわるだけにとどまらず、お家全体をリノベーションですることで働きやすい空間を手に入れました。前編では、在宅勤務をしていくなかで感じた不便な点をまとめました。後編では、前編で感じた不便な点をどのように解決したのか、詳しくご紹介します。お家のなかでの過ごし方が変わり不便さを感じている方、リノベーションに興味がある方、ぜひご一読ください。
- オフィスづくりのプロが、「働ける家」を本気で考えてみた
- 家族のライフスタイルが変化し、フィットしない不便さを感じた
- リノベーション前の全体像
- 「働ける家」には、何が必要なのか?
- 「働ける家」に向かって!
1. オフィスづくりのプロが、「働ける家」を本気で考えてみた
家族のライフスタイルが変化し、フィットしない不便さを感じた
コロナウイルス感染拡大のなか、突如始まったテレワークが生活の一部になった人も多いのではないでしょうか。かくいう私もその1人。以前は、満員電車にゆられながらオフィスに出社し、会議や資料作成などをがっつりやり、また満員電車にもまれて帰る毎日・・・。今は、出社と在宅が約半々になり、ON(仕事)とOFF(生活)が1つの場所に融合したライフスタイルに大きくシフトしました。
その時、改めて気づきました。
「オフィスって働きやすい!」
もちろんお勤めの会社毎にオフィスの環境は異なりますし、自宅もオフィスも変わらないという人もおられるでしょうが、私に関しては、幸いにもオフィスはとても整備されていたので、そう思ったのです。
そして、同時にこうも思いました。
「このまま家でも働くハイブリッドなスタイルになると、今の家だと・・・。」
今の家は、6年前に中古マンションを購入し、自身の設計でリノベーションしたので気に入っています。でも、私も家族も大きくライフスタイルが変化し、それに今の家があっているか、と問われると「いや、あっていないなぁ・・・」と感じてしまったのが全ての始まりです。
リノベーション前の全体像
リノベーション前はマンションとして比較的スタンダードな3LDKの間取りで、回遊動線と書斎、広めの玄関土間が少し特徴的なプランでした。
長男が生まれるタイミングでもあったので、育児のために在宅ができるよう1人用の書斎をこの時から設けていました。そして、機能的な間取りは気にしつつも、日中は家にいないためにデザインや雰囲気を重視して、大きなソファをドンと置いたり、躯体のコンクリート壁をあわらにしたり、照明は落ち着いた電球色をメインにしたり、子供用の黒板塗装壁があるプランニングをしていました。
多分、一般的にも「こんなのいいなぁ」と思い浮かぶ要素は、ちりばめられていたと思います。
ただ、こと「働ける家」という視点では、いろいろしっくりこなかったのです。
2. 「働ける家」には、何が必要なのか?
では、具体的にどこが、「働ける家」としてしっくりきていないのか・・・。
- ① 長時間働くのに向かない椅子&テーブル
- ② 仕事道具の片付けと移動の手間
- ③ ゴチャゴチャして危険な電源コンセント
- ④ 目に負担のかかる照明や採光
- ⑤ オンライン会議やTVの音
順番に、詳細をご説明します。
① 長時間働くのに向かない椅子&テーブル
仕事するための基地となる椅子とテーブルですが、やっぱり気になるのはまずはここです!(家具メーカーなので・・・笑)
在宅で仕事していると本当に立たない&歩かない!!!
オフィスでは、会議などのために移動していて、実は結構歩いていました(そのことに気づいたのもテレワークになったからですが)。しかし、家では会議はオンラインで参加するので、パソコン前から動きません。本当に座りっぱなし・・・本当にシンドイ・・・。
ということで、オフィス用の椅子を妻の分もあわせて購入しようと選び出したのですが、機能とデザインのバランスが非常に難しい。例えば、そこまで広い家ではないのでコンパクトがいいな、いろいろな調整機能がいいな、子供がいるからキャスター無しや汚れにくいのがいいな、と条件を妻と整理していくと・・・ベストな製品がない・・・。こんなにもオフィスと家では選ぶポイントが違うのかと驚きました・・・。
次にテーブルです。私が書斎、妻がダイニングテーブルで仕事することが大半なのですが、それぞれ困りごとが違います。
まず、私が主に使用する書斎は、一見リッチに見えるかもしれませんが天板の奥行が少し浅い(奥行56cm)ために、パソコンが手元に近くなる関係で背中が丸まりやすく、腕をテーブルにのせにくいので肩や首がこりやすい。加えて、モニターも近いので目も疲れやすい(これは、あとで説明する照明とのバランスもありマニアックです・・・)。
妻が使用するダイニングテーブルは、子供用の椅子を毎回動かすのも手間なので、短手(幅80cm)のほうに座っていて、幅が100~120cmが平均的なオフィスの執務用デスクと比べると、資料を広げながらの打ち込みやメモを取るのにも、とにかく狭い。奥行方向にはたっぷり使えるのですが、モニターなどを置くと物が取りづらく不便なので、結局ダイニングチェアを横につけて、荷物置き代わりに使っていました。
② 仕事道具の片付けと移動の手間
これは、ダイニングテーブルでのことになります。
仕事道具などは、生活の中であまり目につかないようにしたい派です。ただ、ダイニングにそのままにできるほどの広さも収納もない。なので、終業後は書斎に毎回片づけていましたが、これがかなりの手間なのです!!!
パソコンなどをカバンにしまう、これはまぁ良いですよね。オフィスから帰るときも同じですから。
ここからです!ノートパソコンに外付けしているモニターやキーボードを外し、まずは大きく重いモニターから運び、そしてマウスや文具などを書類をトレー代わりにして運び、そして椅子にカバンを乗せて車いす状態で書斎に移動。ダイニングと書斎の間を3往復くらいしてようやく片付け完了。もちろん、朝の業務開始の時は、この逆をやります。
なので、朝の業務開始の準備と夕方の就業後の片づけで、合計6往復くらいしていたことになります。ダイニングから書斎までは10歩程度ですが、廊下や扉などを通るので、子供を保育園にお迎えに行くために急いでいると、モニターや椅子を壁などにぶつけてしまい、傷つけてしまいます(傷を見つけたときは、とてもがっかりします・・・)。そんな往復運動無しで仕事道具を片付けられたら、あと1本メールを送れて気持ちがすっきりするのに・・・なんてことも。
③ ゴチャゴチャして危険な電源コンセント
次は、電源です。
オフィスには、デスクや会議する場にほぼ必ず電源がありますよね。しかも、大抵は机上面もしくは専用のボックスの中で電源を取ることができる。でも、家では電源コンセントの多くが壁にありますよね。さらに、仕事ではかなり多くの電源口数が必要になります。
書斎を使用している私の場合は、ノートパソコンにモニター、携帯の充電、最低でも3口は作業に使いますが、他にもプリンターなどがあるので、結局、見えにくいところに延長用タップで口数を増やしました。が、抜きにくいし、ほこりもたまるし、とてもストレスなのです。
そして、妻が使用するダイニングテーブルは、机上面付近に電源コンセントを用意していませんでした。
なので、一番近いキッチンから、こちらも同様に延長用タップでなんとか4口確保したものの、これが使用中は、パソコンなどの複数のケーブルが丸見えでゴチャゴチャし、ただでさえ狭い机上スペースを邪魔します。さらに、ほぼ毎日使うので終業後も机上に出したままにしてしまい、子供がジュースなどをこぼすと一大事です。
子供もタブレット学習などをするので、電源のとりやすさが生活の気持ちよさを左右すると認識はしていたのですが、在宅で仕事することが付加されたことで、さらにそれを痛感しました。
④ 目に負担のかかる照明や採光
そして、照明や採光ですが、これはあまりピンとこないかもしれません。
まず、家では家族でゆっくりと過ごせるように、温かみのあるオレンジ色の電球色や自然な光の温白色などが使われることが多いように思います。対して、オフィスは天井が高いことや書類が見やすいように、白っぽくかなり明るく、均等に照らされていることが多いです(最近は、パソコンが普及したことや、デザイン性の観点から、電球色などが多用されているケースも多く見られるようになりましたが・・・)。
そう考えると、働くためにはそもそも家の照明は暗いかもしれません。さらに、オフィスは均等に照明が設置されますが、家では部屋の中心にのみ設置することが大半で、そうなるとどうしても壁際は暗くなりやすく、かつ自分の背中で影をつくってしまうなんてことも。
さらにさらに、季節により太陽の高さも変わるので、冬など太陽の高さが低い季節は直遮光が部屋奥まではいりモニターが見にくかったりします
これも月に1・2回のような頻度や短い時間ならそんなに気にはならないのかもしれませんが、ほぼ毎日、かつ8時間もモニターを見続けているとなると、目への負担はかなり差が出ると感じています。
目の疲労によって集中力が持続しなかったり、頭痛が起きたりと仕事がはかどらない要因になりやすいので、実はとても重要だと考えています。
⑤ オンライン会議やTVの音
最後に、音です。こいつは、強敵です!(笑)
我が家は、前述したとおり、夫婦ともに在宅で仕事する日が多くなりました。
そうなると当然の如く、オンライン会議の時間が重なることで互いの会議の音をひろってしまったり、片方はオンライン会議だけどもう片方はテレビで休憩、なんてことが頻繁に起こります。
さらに、家族で自宅待機の時は、親は仕事だけど子供はテレビなんてふうに、もはやカオスでテレビの音はもちろん、子供の声もひろわれてしまい、会議にならず、なんとか発言しようとチャット機能を活用するも時間だけがかかるだけで、なにも効率的ではありません。
ご家庭によっては、お子さんが小学校から早く帰ってリビングでお友達とテレビゲーム・・・なんてこともあるのではないでしょうか。
とはいえ、全員個室に入って静かに!なんてわけにもいかないので、お互いに気を使いながら・・・が、これまでの状態でした。
我が子たちは、次男はまだ未就学ですが、長男は新1年生となり、オンラインで習い事なんてことも近い将来のことなので、こちらも、今後のことを考えると何か対策をしないとという気持ちでした。
3. 「働ける家」に向かって!
という感じで、「働く」という視点で家のことを考えると、前回のリノベーションの計画の時にはあまり気にしなかったことが出るわ出るわ状態・・・。
仕事上、気になり出したら止まらず、インテリアや家具のことをいろいろ考えるうちに「よし、もう一度リノベ―ションしよう!」と勝手に盛り上がり、妻に相談。もちろん最初のうちは「気持ちはわかるけど、今でもそれなりだし、お金も・・・」。そりゃそうなりますよね・・・。もう一度ってなったら、相応の費用がかかります。でも、それだけの価値があると信じて、何度も直談判!(笑)なんとか許可を勝ち取り、「オフィス家具メーカー人が働くことを本気で考えた家づくり」をスタート!上記の課題は、もちろんちゃんと対策しつつ、他のことも改善してやろうと思います!
後編では、①~⑤の困りごと毎にどうリノベーションをしていったのか、詳しくご紹介します!
⇒後編はこちら
この方に聞きました
コクヨ WP事業本部 ワークスタイルマーケティング本部 バリュークリエーション部
K.Oさん
オフィス家具メーカーに勤務して今年で14年。
オフィスの空間設計から始まり、カタログなどのプロモーション、現在は商品企画と、オフィス家具関連一筋。
家族は、妻と元気ありあまる男の子2人の4人家族。インテリアと家具、スタバ、長男と共に見るドラえもん映画が大好きな38歳です。
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