植原亮輔・渡邉良重
(KIGI)
撮影:水野貴仁 文:加藤麻司
創造を仕事にする人たちの日常に
ingLIFEはどうフィットするのでしょう。
リアルなワーキング空間で使用していただきました。
ヒントにしてください。
アイデアが生まれるチェア。
クリエイティブユニット KIGI 編
さまざまな企業や製品のクリエイティブディレクション、
さらに自分たちでプロダクトの開発・デザインを手がけ、
OUR FAVOURITE SHOPでギャラリー展示や製品販売などの発信をしている
KIGIの植原亮輔さんと渡邉良重さん。
そんなKIGIの二人は、ingLIFEブランドのディレクションを担当している。
ingLIFEにはじめて触れたとき、どのように感じたのか。
グラフィックデザインのワークで使うユーザーとしての目線、
ディレクターとしての俯瞰的な目線を交えながら自由に語ってもらいました。
インタビュー part 1(3:05)
インタビュー part 1(3:05)
インタビュー part 2(3:23)
インタビュー part 2(3:23)
クリエイターの視点から見た、
作業空間に置くチェア。
デザイン、機能、快適さ、自分たちらしさなど…
ワーキングチェアで大切にしていることは?
機能を追求したメカニックなチェアが会議室に並ぶことで
空間の緊張感が高まるのはあまり好きじゃないと言う、植原さん。
人間より存在感があるようなチェアを創造の場に取り入れたくない。
その想いは、五感を大切にするKIGIのクリエイションとも
つながっているのかもしれません。
一方、渡邉さんが、日々会社で座ってきたのはバランスボール。
自分にとって座りやすいものをいろいろ試すうちに
バランスボールにたどり着いたとか。
バソコン画面に向かうとき、イラストを描くとき、作業に合わせて
ボールを揺らして座る位置を調節してきたそうで
ingLIFEのデザインについて、二人が共通に感じたのは、
既存のオフィス家具のイメージとは異なる優しさ、可愛らしさ。
座面と背もたれの素材が変えてあるなど、
さりげなく気の利いたデザインに好印象をもったと言います。
機能面では座面が揺れること。
イマジネーションをふくらませたいときなど、
ブランコに乗るようにゆらゆらとカラダを揺らし、
脳が刺激しながら考え事をすることもあるとか。
座面が大きいので、あぐらをかいたり、正座をしたり、脚部に足をかけたり、
気持ちいいポジションを自分で探せるのも気に入っているそうです。
西洋のチェアとは異なる、
どこか東洋的なingLIFEの
設計思想。
ingLIFEに座ってワークする中でユーザーとして気づいた点がたくさんあったという、植原さん、渡邉さん。
パソコン画面に向かうとき、座面の前部に座っても
お尻が滑りおちないのはなぜだろう。
座面の側面がカーブしていて包まれるような安心感があるのはどうして?
ingLIFEの設計者にいろいろ質問してみたくなったと言います。
なかでもいちばん聞きかった点は、高さ調整の他にメカがほとんどなく、
座面を揺らすしくみで快適な座り心地をつくりだしていること。
体格や体重が異なるのに、多くの人も快適に座れるアイデアを考えることで
課題を解決している点が興味深いそうです。
そんな二人の感想について、ingLIFEの設計者に
開発思想を説明してもらいました。
チェアは西洋で生まれた文化。
設計の基本はカラダをあずけて休息するもの。
チェアの調節で人の姿勢を補正するという考え方です。
従来のワーキングチェアも、きめ細かな調節機能を使って
座る人が位置や角度をカスタマイズできるよう設計されています。
でも、設計者の意図通り機能を活用できる人はわずか。
そこで思いきって逆転の発想でingLIFEを設計したのです。
日本には、武道、茶道、座禅など
座る姿勢を整えて作業や行為に取りくむ文化が長く受け継がれてきました。
快適な姿勢は座る人が自ら整える。
仕事や食事やリラックスなど作業や行為が変わっても
座る人の姿勢を自然に快適に導いてくれる機構はないだろうか。
そんな設計思想から、座る人の重力を使ってマルチに座面を動かす
360°グライディング機構にたどりついたと言います。
アイデアが生まれやすい環境をつくるには、
リラックスと集中のバランスが大切。
人間の感覚やカラダの動きと呼応して座る人が
無意識のうちに快適なポジションをつくりだす、
ingLIFEは、従来のワーキングチェアの発想を転換させる
歴史的なモデルと言えるのかもしれません。
植原亮輔(KIGI)
クリエイティブディレクター /
アートディレクター
渡邉良重(KIGI)
アートディレクター /
グラフィックデザイナー
KIGI キギ
植原亮輔と渡邉良重により設立。企業やブランドのアートディレクションの他、琵琶湖周辺の職人たちと立ち上げたオリジナルブランド「KIKOF」、プロダクトブランド「D-BROS」、ほぼ日とのファッションブランド「CACUMA」などのデザインコンテンツを手掛ける。プライベートでも作品を制作し発表。東京・白金でギャラリー&ショップ「OUR FAVOURITE SHOP」を運営するなど、自在な発想と表現力でジャンルを横断しながら活動する。宇都宮美術館にて大規模個展「KIGI WORK&FREE」(2017)、越後妻有アートトリエンナーレ2018大地の芸術祭に「スタンディング酒 BAR・酔独楽」出品(東京ADC会員賞受賞)、東京ADCグランプリ(2015)、亀倉雄策賞(11th植原・19th渡邉)等受賞。