2021/3/25
出社頻度は人それぞれかと思いますが、2020年4月以降、在宅でのリモートワークの機会が増え「もう、だいぶ慣れたな」と感じている方も多いのではないでしょうか。ただ、アフターコロナへの見通しが厳しくなっている今の状況下、ご自身の在宅ワークの環境を見直していく良い頃合いかもしれません。
コクヨでは、家具事業部門で生体データ計測に取り組んでおり、延べ200名近くの脳波の分析を通して在宅ワークについても実験を進めてきました。今回、そこで見えてきた、業務内容に向いた空間や、チェアの座り方などについて少し紹介していきます。
家での働き方や家具選びのヒントにしてみてください。
脳波を通して見える3つのパターン
脳波からセンシングできる周波数を分析することで、仕事に向かっている人の“感情”というものをある程度計測できることがわかってきています。
着目した3つの脳波パターン
relax work - リラックスワーク
- 肩の力を抜いて、心穏やかに業務を行っている状態
- 難しい課題や評価作業などに向いている
- 家のソファでのくつろぎとは違い働く際のリラックス状態
zone - 集中
- 集中力が研ぎ澄まされた非常に良い状態
- 緊張状態を伴わない集中
- 時間を忘れて作業に没頭できている
creative - 創造性
- 新たなことを発想し構想する創造性が発揮されている状態
- 脳がポジティブに目の前にある課題に取り組み活性している
これらの感情を追うことで、
■ アンケートによる本人の主観にもとづいた評価
■ 行動観察による第3者からの評価
とは違う人の内面からの情報を推測することができます。
午前と午後で業務配分を変えた方が良い?
みなさん、午前と午後のどちらの方が仕事がはかどる印象を持っていますか?
今回行った在宅ワーク環境での調査(午前1時間と午後に1時間ずつの測定を2か月間実施)では、前述の脳波パターンでいう「リラックスワーク」や「集中」では有意差がありませんでしたが、「創造性」については午後に高まるという結果が出ました。具体的な業務でみていくと、資料修正、資料作成、情報収集、リストのメンテナンス、庶務、メールといったいわゆる「ソロワーク」において、午後の方が創造性が高まることが分かりました。一方、アイデア出しやWeb会議などの「グループワーク」においては午前・午後で有意な差は見られませんでした。午後の方がソロワークにおいて創造性が高まるという結果は、ちょっと意外に感じられた方もいるんじゃないでしょうか。
(グラフ)3つの感情パターン別に見た午前と午後の活性状況の比較
クリエイティブ作業はリビングの方がはかどる?
「個室空間が集中に向いている」というのは経験則的に納得がいく方も多いでしょう。
では、「共有空間の方が創造性に向いている」という情報を耳にしたらどう感じますか?
ちょっと試してみたい気もしますよね。これは新しい気づきで、リビングやダイニングといった共有空間は、部屋の作りとして窓から採光がとれたり、空間的な余裕があることが多く、それらが良い働きかけをしているからかもしれません。これからのさらなる検証に期待したいところです。
(グラフ)空間別で見た3つの脳波の感情パターン活性状況
姿勢を変えることでワークモードを変える
最後に、座り方の件で興味深い測定結果をお届けします。コクヨには、ロッキングチェアのように前後に揺らすことができるチェア(写真・クーナ)があるのですが、このチェアで座面を前傾や後傾にした状態と、一般的な固定型のダイニングチェアでの脳波を比較測定したところ、揺れるチェアの「クーナ」の方が、座面が平坦なダイニングチェアよりも「集中」が高いということがわかりました。研究チームが実験時の様子を観察した限りでは、後傾よりも前傾姿勢時の方が「集中」の傾向があったそうです。そのほかにも、ダイニングチェアよりも「疲労」を感じにくいという実験結果もあり、座面が動くタイプのチェアも注目していきたいところです。
(グラフ)固定型のダイニングチェアと揺れるチェア「クーナ」での脳波の感情の差
まとめ
最後に、在宅ワークでの生産性を高めるための工夫をあらためて4つに整理しておきます。
ご興味わきましたら、自分に合うかぜひ実践してみてください。
① 午後の方が創造性が高まりソロワークにも向いている
② 創造性なら共用空間、集中なら個室空間
③ 集中を高めたいなら前傾姿勢
④ 座面が動かせるチェアは着座時の疲労感を低減してくれる
この方に聞きました
馬郡 恵子 (まごおり けいこ)さん
ファニチャー事業本部 ものづくり本部 DX戦略部所属
マーケティング部門でオフィス・医療施設・幼児施設向け商材の企画・マーケティングを担当
カテゴリー横断的に家具の感性評価に関わる。
プロモーション部門で営業研修、グライディングチェアingのプロモーションタスクを経て
現在マーケティング部門で主観/客観データを用いたプロダクト検証を担当。
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